魔女、倫敦を駆ける

Words : 関 隼

 『バネ足、バネ足、バネ足ジャック
ホワイトチャペルの辺りを、
歩いてみな?』
街路をうろつくストリート・アラブの子供達が、逆立ちに飽きたのかそんな歌を歌っている。その歌に聞きほれるように、小さな女の子が歩みを止めて立っていた。年のころは三歳位だろうか? 伸ばしている髪をローズピンクのリボンでとめ、フリルやレースの類があまりついていないすんなりとしたエプロンドレスを着ている。ロンドンでよく見る『甘やかされたお人形さん』タイプではなく、田舎で見る事ができる『活動的で服を汚すかもしれない女の子に精一杯のおしゃれを』というタイプの子の様だ。
『後から誰かが、こう尋ねるのさ
「失礼、私と一緒に
来ていただけますかな?」』
「…………」
じっと歌に聞き入っている女の子の手を、女性の手が軽く引っ張った。
「ローザ? どうしたの?」
こちらも割合にすっきりとしたワンピースに身を包んでいる。長く伸ばした黒髪が印象的で、『美しい』というより『可愛い』の方がふさわしい女性だった。どうやらローザと呼ばれた女の子の母のようである。
「…………」
 『うんと言ったが運のツキ
あいつはバネの足で、
俺達を連れて行くのさ……』
「ああ……」
答えないローザの視線の先を見て、女性は納得したようだったが、首を横に振りながら娘の顔を覗き込んだ。
「グレン父さんが待ってるでしょう? 最後まで聞いてたら心配させちゃうわ」
その言葉に反応してか、ローザは顔を上げて母のほうを見た。
「だめ?」
「ごめんね。でも、早く行かないと」
悲しそうな娘の瞳を見て、母も残念そうな表情を浮かべる。だからといって、この子の父―つまり、自分の夫―を待たせすぎるわけにもいかない。ただでさえ、郷里へのお土産を買うのにかなり時間をかけてしまったのだから。
「…………はい」
搾り出すようにそう返事するローザの頭をなでて、母は微笑んだ。
「ありがとう。それじゃ、行きましょ」
「うん、デイジー母さん」
そして、母娘は雑踏の中を再び歩き出した。デイジー・ライアンとその娘、ローザ・ライアン。デイジーにとっては数年ぶり、ローザにとっては初めてのロンドン訪問の一コマである。

「ただいま」
「あら、ジェムおじさん。お帰りなさい」
数時間後、ロウアー・テムズのほとりにあるジェイムズ・ルイス邸に主人が戻ってきたのは、まだ日も沈まぬ宵の口という珍しい時間だった。
「おかえり」
一拍遅れて、ローザが母の言葉に追従する。彼女は窓の外からあきもせずに雑然としたテムズへつながる街路を見ていたのだ。
「なに、せっかくお客さんが来ているんだ。早く切り上げてもばちはあたらないだろう?」
そう言って微笑むジェイムズの顔は、デイジーの胸にノスタルジックなものを届ける。故郷であるフォクスグローブ村の守護精霊を救出する為にここに居候したのはずいぶん昔の話なのに、おじであるジェイムズの人好きのする笑顔はその頃から何も変わっていないのだ。自分は伴侶を得て、子供まで出来たのに……
「デイジー、どうかしたか?」
「いいえ。わたし、ジェムおじさんの笑顔が好きだなあって、思っただけ」
「ローザも、すき」
「そ、そうかい?」
そういう事は言われ慣れていないのか、中年の船長さんは顔を赤らめる。とりあえず冷え出した汗なぞを拭いながら彼は話題を変えた。
「グレン君はどうした?」
「あの人なら上よ。おじさんの所にある『ストランド・マガジン』に夢中なの」
デイジーの答えを聞いて、ジェイムズはちらりと天井のほうを見た。
「おやおや、ヴィクとアルバートもかくやという君達でもそんな事があるんだね」
その言葉に、デイジーが肩をすくめて見せる。
「仕方ないわ。評判は聞こえてきても、フォクスグローブであれを取り寄せるのは一苦労なんだもの。こういう時に読んでおきたいんでしょ」
「なるほど……」
ジェイムズが感心したのを見計らうかのように、ローザが体を部屋のへ向けた。一直線に母であるデイジーの方を見る。
「デイジー母さん。あたしおなかすいたわ」
その言葉で、デイジーは新たな思案を始める。
「あらそう! ジェムおじさん。夕食はどうしましょう? まだ早いから何も考えてなかったのよ。買い物に行くべきかしら」
「いや、いいだろう」
今にも外へ出て行きそうな雰囲気のデイジーを押しとどめ、ジェイムズは二人に提案した。
「せっかくのミドサマー・イヴだ。精霊や妖精と関連が深いわれわれも、外食などして派手にいこうじゃないか」
「すてき!」
「すごいわ、ジェムおじさん!」
もちろん二人は大賛成のようだ。きらきらと目を輝かすその表情は、さすが親子と言えるくらいそっくりである。
「いい店を一軒知っているんだ。今夜はそこでディナーにしよう。もっとも、シンプスンズみたいな高級店ではないがね」
「ううん、うれしいわ。おじさん!」
家庭料理暮らしのローザは、純粋にお店で食事をする事自体を喜んでいるようだ。そんなローザを見て目を細めたデイジーは、二階に上がる階段に向かって歩き始めた。
「じゃあ、グレンを呼んでくるわ。早く支度しなきゃ、ごちそうが逃げてしまうもの!」
その言葉を聞いて、ローザもあわてて椅子からおりる。母娘があわてて階段を上がっていく後ろ姿を、ジェイムズは微笑みながら見送っていた。

 雑然とした雰囲気の中、人々は食べ、飲み、そして笑う。ホワイトチャペルのすぐ近くと言う立地条件のせいか楽士達の歌には微妙に品がないが、それもローザに聞かせられないというほどではない。もちろん、二階部分の連れ込み宿は別だが。
「うまいですね、この煮込みは!」
ジェイムズの向かいに座る金髪の男が目を輝かせた。ローザの父、デイジーの夫であるグレン・ライアンである。
「こんな所があるなんて、知らなかったなあ」
「まあ、微妙な所にある店だからね」
ジェイムズが薄く笑った。グレイスチャーチ・ストリートにある『クロス・キーズ』、それがこの店の名前だった。
「夜も早いうちなら大丈夫だろうと思ったんだよ。うまいのは事実だからね」
そう言ってローザの方を見ると、彼女も皿に顔をつけんばかりの勢いで料理を食べている。
「ローザも気に入ってるみたいだしな」
「そうね」
娘が料理に夢中になっているところを見て、デイジーも微笑む。つられるようにしてグレンもにこやかな顔になった。それだけではうれしさが収まらないのか、彼はビールの入った杯を手に取る。
「さあ、ジェイムズおじさん。乾杯といきましょう!」
「お、いいねえ。何に乾杯しようか?」
二人がビールの杯を掲げて思案を始めたのを見て、デイジーがぶどう酒入りの杯を掲げると共にこう宣言した。
「ミドサマー・イヴとローザに!」
周りの酔客達は『何だ? この女?』という視線を向けるが、もう慣れっこになっている男性陣はひるむことなく杯を打ち合わせた。
「乾杯! ローザと、ロンドンに!」
「乾杯! ミドサマー・イヴと、君達家族に!」
勢いよく杯をあおる。そして、笑顔。うまい料理と酒、そして楽しいおしゃべり…… 彼らに時間を忘れさせる要素は、充分にそろっている。そして、それを止める事が出来そうな唯一の人材は、
「…………」
一心不乱に、料理を食べていた。

「すっかり、遅くなっちゃったわね」
火照った頬に、初夏の風が涼しい。飲みなれていないぶどう酒に少し赤い顔をしながら、『クロス・キーズ』を出たデイジーはゆっくりと深呼吸をした。横では、グレンとジェイムズがほろ酔いかげんで肩など組んでいる。
「い〜気持ちですねえ!」
「うむ! 今日はいい夜だ!」
「もう、二人とも飲みすぎよ。……あら?」
男性陣にあきれたデイジーは、ふと周りを見回す。自分の娘に姿が見当たらなかった。シティに近いのにもかかわらず、この辺りの街灯はまだガス灯で、見通しがあまりよくない。自分達より先に歩き始めてしまったと考えたデイジーは声をかけてみた。
「ローザ? ローザ!」
立ち止まっていても見えない所が多いので、少し歩いてみる。しかし、娘の姿は見当たらなかった。
「どこ行っちゃったのかしら……」
フォクスグローブですくすく育ったローザは好奇心が強いようで、村でもよく信じられない位遠くまで自分の足で歩いてしまっていた。今回もそれなのだろうと察しはつくが、いかんせん場所が場所である。
『ここはロンドンで、しかもホワイトチャペルの近くなのよ……!』
デイジーの頭の中にずいぶん昔に起きた殺人事件が頭をよぎる。【ジャック・ザ・リッパー】は結局捕まっていない。つまり、誰かが被害者になる可能性はまだなくなっていないのだ。
「ローザ! ローザ!?」
さっきよりも強い調子で呼んでみる。返事を待っていたその時、デイジーの耳に聞き覚えのある歌が飛び込んできた。
「おもちゃの馬で バンベリー・クロスへ
白馬の貴婦人 みにゆこう」
「マザー・グース?」
よくローザに歌ってやる歌の一節である。一体誰が歌っているのだろうか? ふらふらと歌の聞こえるレーンを覗き込んだデイジーは、そこで二つの探し物を見つけた。一つは歌い手、そしてもう一つは……
「ローザ!」
コートらしきものを着て、なぜかシルクハットをかぶった紳士風の男性が、女の子の手を引いている。その女の子こそ、探していたデイジーの娘だった。
「どうした? デイジー」
さすがに何事かあったのかと気づいて、グレンがデイジーの横にやってくる。まさにその時、ローザは二人のほうを向いて、にっこり笑った。
「!?」
次の瞬間、紳士は飛んだ。いや、正確には跳ねたと言う方がいいだろう。彼はローザをつれたまま、まるで足にバネがついてるようにびよ〜んと跳ねたのだ。
「待って!」
デイジーの制止も聞かず、男とローザはデイジー達の視界から消えていく。デイジーはあわてた表情でグレンの方を見た。
「どうしよう!? ローザが、ローザが……」
そう言いながらすがりついたグレンの表情は、虚空を見たまま固まっていた。
「グレン? どうしたの? あの人を知っているの?」
「ジャック……」
「?」
「バネ足ジャック、ジャック・ザ・ホッパーか! まさか実在したのか!?」
「誰? その人」
いつの間にか酔いもさめたグレンは流れる冷や汗を手の甲で拭っていた。
「ジャック・ザ・リッパーの事は知ってるだろう?」
「ええ」
「あいつの後に出た噂話さ。歌にもなったな。足がバネみたいになってる紳士についていくと、のどを掻っ切って殺されるって……」
さらに続こうとするグレンの言葉を、デイジーがさえぎる。
「その歌って、『バネ足、バネ足、バネ足ジャック ホワイトチャペルの辺りを、歩いてみな?』って出だしじゃない?」
「よく知ってるね。その通りだよ」
グレンの返事を聞いて、デイジーの顔が蒼白に近くなっていく。
「どうしたんだ?」
「ローザ、昼にその歌を聴いていたわ……!」
「それとあいつに、何の関係が?」
「今夜はミドサマー・イヴよ! 私達の力も、妖精や精霊達のおかげで強くなるの!」
「あ、ああ。それは聞いてるけど……」
「あの子が歌を聴いて、力でジャックを作ってるんじゃない!?」
デイジーの推論に、今度はグレンが顔面を蒼白にする。
「じゃあ、あいつはあの歌のとおりに行動するのか? なら最後は……!」
デイジーは振り返り、まだいまいちしゃんとしていないジェイムズに声をかける。
「ジェムおじさん!」
「うん?」
あわててジェイムズに駆け寄ったデイジーは二、三会話を交わして、再びグレンの所へ戻ってくる。グレンはあわてて自分達とは別方向に走り始めたジェイムズを見送った。
「何て言ったんだい?」
「警察を呼んできてくれって! ジャックは捕まえなきゃ!」
「じゃあ、ローザは?」
「私達が追いかけて、助けるのよ!」

目を閉じ、一心不乱に呪文を唱えるデイジーの髪が突然巻き起こった風になびく。精神集中が必要な所を見慣れているわけではないグレンは、その光景にあっけに取られてしまっていた。
「…………さあ、お願いね」
彼女の手には、静かに輝く光の球体がある。しかもそれは、ふわふわと宙に浮き始めたのだ。
「こ、これ、なんだい?」
「この辺りに出てきてる精霊や妖精に、ローザを探すのを手伝ってってお願いしたの。これで案内してくれるそうよ」
「そりゃ、ありがたいね」
「さ、行きましょ!」
いまや完全にデイジーの手を離れた球体はふらふらと彼らの目前で動き始めている。二人は球体に誘われるように街路を走り始めた。

 一体どれくらい走ったのだろうか? 二人の目にはにぎやかな繁華街が映っていた。
「なあ、デイジー」
切れ切れの息の下で、グレンが妻を呼ぶ。
「なに?」
「もうピカデリー・ストリートだぞ? 本当にそいつ、ローザの方へ向かってるのか?」
「信じないって言うの?」
「いや、……ジャックなら、イースト・エンドの方とかに行くんじゃないのか……?」
さらに切れていく息の下、グレンがそんな疑問を放った時、球体の動きは急に遅くなった。
「? 間違いに気づいたのか?」
「ううん。近いらしいわ」
言われてグレンは辺りを見回す。そして納得したように頷いた。
「なるほど、ハイド・パークか……。それなら、人気もない」
しかし、球体はハイド・パークではなくパークの端にある交差点近くの屋敷へとふらふら飛んでいった。
「おいおい、どっちに行くんだよ」
「しいっ! ついて来て。静かにね」
そして、球体は交差点の向かいの街路。しかもわざわざ街灯の光が一番届いてない所で止まり、自らの光量を下げた。
(ここでチャンスをうかがえって事ね)
(そうらしいな)
そして、二人が見た街路の反対側の光景は、二人の予想を完全に裏切っていた。
(え?)
(何?)
とある屋敷の二階、そのバルコニーにテーブルと三つの椅子が出されている。街灯の明かりに照らされたそこに座っている人物は、先程ローザをさらった紳士―つまりジャック―とローザ、そしてデイジーは見たこともないような老紳士の……
(幽霊ね)
幼い頃から精霊などを見慣れているデイジーにとってはたいした事もないのだが、まだ見慣れていないグレンなどは、さっきとは別の意味で冷や汗をたらしている。
(ゆ、幽霊って、どうするんだよ!)
(待って、もう少しスキをうかがいましょ)
(あ、ああ……)
デイジーの提案をのんで暗がりに潜む。バルコニーの三人は何やら楽しそうに談笑しているようだった。
(なあ、少しおかしくないか?)
(そうね。ローザも楽しんでいるみたい)
(いや、こっちが油断しちゃいけないんだけどな)
などと両親が話し合っているのも知らず、笑い声を上げていたローザはやがて立ち上がった。そして、二人の紳士の手を取る。
(?)
両親が首をひねった瞬間。ジャックの力で三人は再び跳ね上がった。それと同時に球体が再び輝きだす。
「いかん! 追うぞ、デイジー!」
「はい!」
球体を追うように、二人は走り始めた。

 街灯が輝き、人々のざわめきが聞こえる。歩道はおろか車道まで人であふれかえって、雑踏が出来ている。みんな楽しそうな表情で飲み、食べ、歌っている。所々ではけんかも起きているようだ。お世辞にも上手いとはいえないバラードがどこからか聞こえてくる。
『神を称える言葉あり 下劣な歌あり
クラッカーの爆裂あり
プリプリしたソーセージを
胃袋に押し込む
生姜パンでジンを飲み倒すぞと、
俺は宣言した
それが
ボウ・フェアで手に入るすべてってもんさ』
……そう、ここはボウ・ストリート。ロンドンでもかなり猥雑な繁華街として有名な所である。今、ここは季節外れのフェアの真っ最中だった。
「…………客がみんな、普通じゃないけどな」
グレンがうめくようにそう言った。行き交う人の波の向こうが、透けて見える。つまりは、 「幽霊のフェアって、聞いたことないわね」
「落ち着いて言うような事か! ローザはこの中にいるんだぞ?」
普通の人間と同じように幽霊達はフェアを満喫している。いくら向こう側が透けているとはいっても、これではローザを探すのは一苦労だろう。グレンの指摘に考え込み始めたデイジーは、ふと顔をあげた。
「あ、グレン」
「え? あ……」
さっきまで二人を案内していた球体が、ゆるゆると動き始めている。
「ローザが見えてるんじゃないかしら?」
「とにかく、追うぞ!」
球体は、二人が追える程度の速度で飛び続け…… たかと思うと、割合とすぐに止まった。
『ローザ!』
グレンとデイジー、二人の声はみごとにハモった。二人の目の前で、ローザは幽霊達と手を握り合い、楽しそうにでたらめなダンスを踊っているのだ。でたらめなダンスの統制は、これまたでたらめなバラードによってかろうじて保たれている。
『野を越え 丘を越え
何十人単位で集まってくる
ビリングスゲイトからは魚担ぎ人足』
「きて!」
大騒ぎの中、ローザはそれに負けまいと大声を張り上げた。
「デイジー母さん、グレン父さん!」
『テムズ・ストリート・カルマンからは
彼女の自慢の色男
洗っても洗っても黒い色が落ちない
煙突掃除人足』
「おどろう!」
見れば、バネ足ジャックまで踊りの輪に入っている。ローザとジャックの距離が離れている事を確かめて、デイジーは張り詰めていた緊張を解くようにため息をついた。
「……あの子が、さびしかっただけなのかも」
「え?」
 『ほら あそこに屑屋のディックもいる』
「思い切り騒ぎたかったんじゃない? せっかくのミドサマー・イヴなんだから」
「じゃあ、今までの全部、ローザの仕業って言うのか!?」
 『みんな仲良く 腕を組み この日ばかりは楽しそう』
「もういいわ! とにかく、わたし達も踊りましょうよ!」
デイジーはグレンの腕を引っ張りながら踊りの輪に入る。
「デイジー母さん!」
目ざとく母親を見つけた娘に、デイジーはウインクした。
「こうなったら、とことん付き合うわよ!」
「うん!」
「おいおい! ホントに幽霊とダンスするのか!?」
うろたえているグレンを置いてけぼりにして、母娘がにっこりと笑いあう。
「いいじゃない、ほらグレン、踊りましょ!」
夫婦は輪の中心で舞踏会の真似事をしてみる。面白がった輪の人々―ローザを含む―はそれに調子をあわせる。笑い声と、バラードと、どしどしと踏み鳴らされる足音、そして拍子を取る拍手…… そんなものに包まれて、親子はそのまま一晩中踊り明かしたのだ。
これが、1905年のミドサマー・イヴに起きた事のすべてだった。ちなみに、このときの記憶が元でデイジーの娘ローザがロンドンでの暮らしを夢見るようになるのだが、それはさらに十年以上経った後の話である。

(了)

[ back to index ]

[$Id: happytalk2.html,v 1.1 2001/11/10 18:08:47 lapis Exp $]